COYOTE
普通に美味しいコーヒーが、普通に飲み続けられてほしい。
エルサルバドルと京都を繋ぐ、信頼関係。
新旧すべてが入り交じるまるで日本のコーヒー業界の縮図のような街、京都に店を構える中米エルサルバドル専門店COYOTE。産地との信頼関係で成り立つサプライチェーンを最も体現しているCOYOTEの創業者である門川さんに話を伺った。※文中敬称略
京都から、エルサルバドルへ。
コロナ禍の2020年。JICA隊員としての任期がまだ残る中、無念にも緊急帰国した門川の決断が今のCOYOTEの始まりである。
創業者の門川は、京都生まれ京都育ち。
学生時代に南米を旅をしてた時期があり、興味本位で行ったコロンビアのコーヒー農園での収穫体験で、コーヒーの生産現場の凄さを目の当たりした。その時に現地でお世話になったコーヒー生産者の人たちといつか仕事がしたいと思い、新卒で地元京都に本社を構える小川珈琲に入社。入社後はコーヒーの知識を深めていく中で、原材料の品質が美味しいコーヒーには重要だと感じるようになり、生産国への興味が高まった。
そうして偶然見つけたのが、青年海外協力隊でのエルサルバドルでのコーヒー生産者への支援案件だった。生産国に行って仕事ができると考えた門川はすぐに応募し、無事エルサルバドルへの渡航が決まった。
「たまたま配属された農園が、世界でもトップクラスコーヒー農園、サンタロサだった。」
そうして彼は現地の生産者と連携をとり、エルサルバドルのチャラテナンゴ地区のコーヒーの品質向上に邁進。エルサルバドルの生産現場の現状を五感で学んだ。
サプライチェーンの遮断。消費国から出来ること。
2020年、コロナにより緊急帰国した門川は、帰国後も日本で生産者達とコミュニケーションを取り続けた。4月~5月にエルサルバドルに買付に来るはずグリーンバイヤー達がその年はロックダウンで来れず、同時に世界では多くのコーヒー店が閉店するという自体になった。
「カディート(門川の現地の愛称)、今年の売り先がキャンセルになってしまった。売れない在庫を抱えていて、なんとかできないか。」
とある生産者からの連絡が彼を突き動かした。
「いつかボランティアではなくビジネスとして彼らのコーヒーを扱いたいと思っていた。やるなら今しかない。」
門川はコロナ真っ只中に、現地のキャンセルになった生産者の在庫を全て輸入することを決めたのであった。しかし日本国内でも生豆の販売先にアテはなかったので、まずは自分で焙煎して販売する方法を選んだ。今のCOYOTEの始まりである。
パカマラへのこだわりと自信。
素材にこだわりすぎたが故に、素材にこだわらなくなる。
エルサルバドル専門店のCOYOTEにとって、パカマラ種を取り扱うことがどのお店よりも多い。パカマラ種はエルサルバドル発祥の品種で、エルサルバドルでは最もポピュラーな品種である。豆の粒が大きいのが特徴で、味もエルサルバドルのテロワールがしっかり感じられるコーヒーだが、焙煎が難しいのが特徴。
「パカマラを焙煎するのが苦手というロースターさんと出会うけれど、僕は現地でパカマラの焙煎ばかりしていたので、寧ろ得意です。」そう語る門川は、とにかく現地で飲んで美味しかったパカマラの味を再現しようとしている。
「エルサルバドルからしか仕入れていないので、何種類もサンプルを取り寄せて味を確認することはしていません。とにかく送られて来たものをどう美味しく調理できるかだけを考えています。」
COYOTEの圧倒的な強みは、エルサルバドルに特化した仕入れ。生産者との信頼関係の上で成り立っており、現地が良いものを送ってくれるので、こちらで選んで買うというこはしていない。更に、今年から門川自身がエルサルバドルの輸出会社の役員となったので、現地で出来上がったコーヒーを輸出者として日本に紹介するという形になった。
「結局、素材にこだわり過ぎた故に素材にこだわらなくなりました。生産者さんとの強い信頼関係があるので、品質も全て任せられると思っています。ただ、このモデルは1カ国に特化して専門でやっているからこそできることだと思っています。」と門川は語る。
日本のロースターとして、消費者に寄り添う
「消費者に寄り添った発信をすることを心がけています。」
前述のように、COYOTEの強みは生産者との信頼関係が築けていることだが、最近はそれを過度に押し出しすぎなくてもいいのではないかと門川は考えている。
「信頼関係の本質は生産者との繋がりを大切にしていくことなので、生産者側とのトレーサビリティをただ紹介するだけではなく、もっと消費者に寄り添ったブランドにする必要があると考えています。たとえば、豆の消費方法の提案の仕方や、より広い層に向けて刺さる焙煎度合いを用意したり。」
普通に美味しいコーヒーを、何も考えずに普通に美味しく飲んでもらえるか。COYOTEのコーヒーはいつどれを飲んでも美味しいし、それでいて生産者とも繋がってるという方向を目指したいと門川は語る。
普通に美味しいコーヒーが、普通に飲まれ続けてほしい。
「スペシャルティコーヒーの業界が確立されていく中で、業界の人に評価されたコーヒーと、一般で受けるコーヒーに乖離があるなと感じることが多いです。あくまでコーヒーの美味しさは地続きで、普通に美味しいコーヒーの延長線に評価の高いコーヒーもあると思っています。」
COYOTEから届ける、エルサルバドルの温かさ
「エルサルバドルという国をもっと知ってもらいたいと思っています。意外と知ない人多いんです。ネットで調べただけだと、危ない国とうイメージが強いですが、実際は凄く良い国で、優しい人が沢山いる温かい国だと思っています。」
そんなCOYOTEにしか表現できないエルサルバドルの土地の味を、京都からお届けする。Heiroomの皆様にもぜひお試し頂きたい。
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